―魚が空を飛ぶ日―
印象派の画家ポール・ゴーギャンの遺作:「わたしたちはどこからきたのか、わたしたちは何なのか、わたしたちはどこへ行くのか」という画のタイトルと共に書いて参りましたアルツハイマー症(自己喪失症)へのいくつかの提案は、この今回の第3回で一応の完結といたします。
今回の、この第3回目のタイトルは敢えてご覧のように「魚が空を飛ぶ日」としました。これは笑い話のように思われるかも知れませんが、アルツハイマー症になった初期の段階で認識の混濁が進行し、ある日突然患者が発する言葉なのです。
「魚が庭の木に止まっている」とか、犬が走っているの見て「ウサギが走っている」と思ったりするのです。
今では書物で紹介されたために有名になったアメリカのあるアルツハイマー患者の介護者の言葉:「神様、あなたはほんとうにいらっしゃるのですか?もし、いないのであれば私が神様を作ってでも、その神様にお願いしたい。どうか助けて下さい、と。」 幸せだった歳月は過ぎ去り、年老いて身体の自由も侭ならない暮らしの中で、子供たちは皆んな去ってしまった今、最愛の夫が私を忘れ、自分をも忘れて遠い自己喪失の世界へ旅立って行く心の衝撃を綴った言葉として胸を打ちます。
統計に表されているだけでも現在400万人を超えるアメリカ人が重度のアルツハイマーを患い、1,200万人が軽度、中度の患者となっているといわれます。
もっと詳しく分析すると、50才代以上の8,000万人が既に年令による記憶力減退などの脳機能の障害予備軍といわれているのです。他方では人間の寿命はどんどん延びています。恐らく今後30年から40年後には120才という日が来るかも知れないのです。その時、アルツハイマー症(自己喪失症)は何人に到達するか、を考えればこれはどうしても他人事ではなくなる筈です。
あなたにも、いつ突然「魚が空を飛ぶ日」がやってくるかも知れません。
その日を未然に防ぐ自己防衛のために、このコラムの第1回、第2回を通じて私はその具体的な方法を述べてきました。
その第1は、肉食、砂糖そして油のとり過ぎを止め、そして第2にマイクロウェーブオーブン(電子レンジ)での調理を即刻止めるように、世界の具体的なデータを示して警告してきました。
また第3には農薬やさまざまな生活環境汚染から身を守って、襲い来る重化学金属の体内侵入を防ぐか、もしくは体内に入ってきた汚染物質を極力体外へ排泄させるサプリメント(例えばキトサンなど)を常用することの重要性です。
また、第4として、健康診断とか人間ドックという名目で浴びるX線、CTスキャンと血圧、コレステロール降下剤などの投薬との複合による危険は多くの実例をもって警告して参りました。
このように、非常に疑わしい、危険な要素を一つ一ついかに取り除けるか、否かというある種の「生活革命」こそがアルツハイマーを遠ざけ、癌を遠ざけ、21世紀に生き残って行く方途だということになるのです。
このように考えれば、今日の私達自身が私たち自身をコントロールできるか、どうかにかかっているようです。それは「知性」です。知性を磨くことが脳を若く保つ方法なのです。むづかしいことではありません。大きく2つあります。1つはできるだけ仕事をすることです。早期の引退などは奨められません。仕事は時間の制約が伴ない、人との約束が拘来します。それだけで知的機能は充分な刺激を受けるでしょう。
2つ目は、創造力を鍛えることです。読書だってその1つです。絵を書いたり、楽器を毎日奏でること、歌うこと、そして、低俗なものではない、知的な交友を通じて「右脳」を常に使わなければなりません。
つまるところ人生は「知性を磨く」ことに尽きるのではないでしょうか。
2003年に学術専門誌「Nutrition」は多数の人間を通して大規模な実験を実施して治癒効果を確認した“脳を若く保つ”サプリメントを公表しました。前回に続いてそれらを中心にして若干の解説を付して本稿を了えたいと思います。
① ビンポセチン(Vinpocentine)
ハーブのPeliuinkleから抽出。健常者のためにも、記憶力の減退が始まった人にも共に効果がある。年令による記憶力の減退は回復する。健常者でも記憶反応はスピードアップされる。適量は1回10mg、1日2回。ギンコビローバ(Ginko Biloga)と同時に摂ることを奨める。
② フォスファティディール セリン(Phosphatidylserine)
フォスファティディールセリンはすべての細胞膜のリン脂質の中に存在するけれど、特に脳に集中している。サプリメントとしてのフォスファティディールセリンは大豆レシチンから作られ、老化によって減退する記憶力、記憶喪失に効果がある。適量は1ヶ月間 1回100mg x 1日2回、2カ月目から1日100mg。
③ アセチル―L-カルニチン(Acetyl-L-Carnitine)
アセチル―L-カルニチンは脂肪を燃焼させて貯めないことで知られるが、同時に年令と共に失われる認識力や集中力を高めて酸化ダメージから脳細胞を守ることがわかってきた。1日当たり500mg〜1000mgづつ朝・晩2回が適量。
④ EPA/DHA(Omega-3とも呼ぶ)
イー・ピー・エー/ディー・エイチ・エーは、魚油が原料とされるのが一般的であるが心臓、血圧、血管、コレステロールの治療に必要不可欠なサプリメント。近年の研究では、そううつ病の治療にも効果を確認される一方、子供たちのIQを高めたり脳神経の働きを助ける大きな力が判ってきた。 1日当たり1000mg〜3000mgが適量とされるが、症状によって増やすことも必要。
⑤ フォスファティディールコリン(Phosphatidylcoline)
略号はPtC。PtCは全ての細胞膜、とりわけ脳細胞に存在するが、通常は老化と共に減少してゆく。PtCは単に記憶力の機能の回復に効果があるばかりでなく、肝臓の解毒作用を促したり、若さを保つサプリメントとして広く利用されている。1日に900mg相当量を朝・晩2回が適量。
⑥ エス・エー・エム・イー(SAMe)
S-Adenosyl-L-Methionineの略号が製品名として使用されている。SAMeは過酸化脂質を撃退して脳組織のグルタチオン抗酸化作用を促進することで最近注目のサプリメント。特にセロトニン、ドパミンといった脳神経伝達物質を活性化する力が画期的である。