「栄養不良」の人達が急増しているのをご存じですか?第二次世界大戦から60年以上の月日が経過し、物資や食料不足による栄養不良という言葉はもはや死語になり、忘れ去られつつあります。今どき「栄養不良」?それって拒食症や過度なダイエットから来るものでは…とお思いの方も多いでしょう。ところが、高カロリー食品の山の中で、肥満になりながらも、この「栄養不良」という事実は存在するのです。もしかすると、あなたもそのうちの一人では…?
フードピラミッドの誤り
アメリカの農務省が1992年に発案したフードピラミッドというのをご覧になった事があるでしょうか?ハワイではチルドレンズ・ディスカバリー・センターという青少年向けの博物館でも、このフードピラミッドを大きく展示して子供たちに「健康的」な食生活を奨励しています。実際、どこの学校でもこのフードピラミッドをガイドラインとして老若男女の食生活を管理しようと試みてきました。ピラミッドの底辺、つまり多量に摂取するべきものとして炭水化物が位置し、そのすぐ上には野菜と果物が二分され、さらに乳製品と肉・魚・ナッツ・乾燥豆類が位置し、三角形の頂点の部分、つまり一番少量を摂取するべきものとして脂肪、油、ケーキや菓子類が記載されています。 個別の食品に注目することなく、単に「炭水化物」「脂肪」「タンバク質」と大別し、底辺に位置する炭水化物なら大半は安全という印象を植え付けてきました。また、肉類や乳製品という「タンパク源」に分類されるものに飽和脂肪(コレステロール値に悪影響)が多量に含まれることを知りながらも、このピラミッドを考案した農務省としては畜産業者や酪農業者の保護を優先として、これらの健康に関する知識や情報を無視した訳です。
私達の口から入る食物の数百種類という食品は簡単にピラミッドの形に分別することは不可能なのは誰にでもわかりそうなものですが、農務省はそれを無理やり簡易化だけを目的に作ってしまった訳です。魚やナッツ類、野菜などに含まれる「いい脂肪」には心臓病や癌などを予防する効果があること、体に悪い炭水化物が存在することなどは今や常識になりつつある事実なのに、脂肪全体の摂取量を減らすことで前述の飽和脂肪の摂取量も減るはずだからと発表し、その結果アメリカのスーパーマーケットにはローファットの文字が溢れることになった訳です。
真のヘルシーフードを見極めよう
アメリカにある健康促進財団の理事の一人がこう言っています。「穀物はそのままでは大した利益にならない。けれど、“膨らませて(精製して)、甘くして、絵の付いた箱に入れてオモチャを添える”だけではるかに高い値段で売れる。」アメリカのスーパーの棚という棚にこの描写にピッタリの加工食品が所狭しと並べられています。こういった製品に「low fat(低脂肪)」という表示を付けて、新鮮な果物や野菜の写真を表に付けるだけでヘルシーなイメージを植え付けてきました。消費者側は同じスナック菓子でもlow fat 、そしてwhole wheat(全穀小麦)という表示があるだけで「健康食品」だと思い込んできてしまいました。アメリカの食品産業で日本で数例あったような中味のごまかし(輸入牛を和牛とラベルしたり、牛乳を再生利用したり…)はあまり前例がありません。しかし、こうしたいわゆる「健康食品もどき」で収益を上げ、カロリーばかり付けて、ビタミンやミネラルをほとんど摂取しない「ハイテク栄養不良」人口を急増させる事にかなり貢献していることは確かでしょう。
それでは、何をどのように食べることがヘルシーなのでしょうか? 1957年にミネソタ大学で行われた調査に大変興味深いデータがあります。当時の同大学教授だったキース博士はアメリカ、フィンランド、オランダ、イタリア、ユーゴスラビア、ギリシャ、そして日本で心臓病の発生率を調べる研究をしていました。この研究で、博士は日本での発生率が一番低く、他の西欧諸国では日本の5倍以上の割合で発生していることを明らかにしました。一番多かったフィンランドでは日本の約8倍という率で心臓病が発生していました。約50年前の当時の日本人の平均的な食事内容は今とはかなり違うものです。マクドナルドの日本第1号店は1971年に銀座にオープンしていますから、もちろんファーストフードもなく、1日の食事は次のようなものでした。ご飯が4?5カップ、果物が140?224グラム、野菜が252グラム、豆が56グラム、肉が約56グラム、魚が84?112グラム、ミルクは0.5カップ、卵は1個以下、砂糖は小さじ2、醤油が大さじ1.5、それにビールが男性は420グラム、女性はごく少量、となっていました。この食事内容は適度な低脂肪、低肉、低カロリー、高魚、高果物、高野菜、高米食、唯一醤油が多いことから塩分が多いとも言われますが、心臓病から逃れるための理想的な食事内容かもしれません。ファーストフード、加工食品、つまり箱やパッケージから出してすぐに電子レンジで「チン!」のハイテク食品とは無縁の今流行の「スローフード」に類似する食生活だった訳です。
ハイテク悪玉脂肪?トランス型脂肪
アメリカではこの夏からFDA(食品薬物管理局)の指定で「トランス型脂肪]と呼ばれる脂肪の種類がフードラベルに記載される新たな項目として加えられました。正式には各社とも今夏から1年以内に開始する義務があるというものですから、これから1年かけて食品業界ではトランス型脂肪を原料から除去したり、きちんと表示される作業にとりかかることでしょう。
フードラベルとは加工食品すべてに義務付けられている栄養項目の一覧表で、カロリー量から、脂肪、コレステロール、ソディウム(塩分)、炭水化物、ファイバー(繊維質)、糖分、たんばく質などのグラム量やFDAが設定した一日の奨励摂取量内での割合などが一目瞭然で分かるようになっている表です。
トランス型脂肪というのは実は自然界にはごく少量しか存在せず、いわば人工的に「発明された」脂肪で、1940年代に液状の脂肪を固形化する手段として脂肪の分子を一部、水酸化するという加工方法で使用され始めました。トランス型脂肪は心臓病の大敵とされ、悪いコレステロールとよばれるLDL値を上げ、良いコレステロールであるHDL値を下げるばかりか、一旦体内の細胞膜に吸収されると、動脈や肝臓その他の臓器に脂肪の塊りとして蓄積され、心臓麻痺や血栓、動脈硬化の原因となります。癌との関連性も唱えられるようになってきています。オランダで行われた研究では、乳がんの女性の乳房細胞からトランス型脂肪がかなり高比率で検出されたと報告しています。トランス型脂肪はインシュリンの反応を鈍くする効果があることから、糖尿病患者は特に気をつける必要があるでしょう。
いわゆるファーストフード以外にも、一見して「ヘルシーフード」という仮面をかぶった食品に、実はこのトランス型脂肪が多量に含まれていることが多いのをご存じでしょうか?トランス型脂肪食品のトップ10リストを挙げますと…
1. マーガリンやショートニングなどのバター類似食品
2. ケーキミックスやパンケーキミックス
3. インスタントラーメン、カップヌードル(特に多量含まれています)
4. ファーストフード一般(フライ類)
5. 冷凍食品(冷凍パイ類、ビスケット、フライ、パン粉で揚げた魚、ローファットと記載されていてもトランス型は多量に含まれています)
6. 市販されているドーナッツ、クッキー、ケーキなどのベークされた食品
7. ポテトチップやクラッカー類
8. 朝食用加工食品(シリアル、グラノラバーなど)
9. キャンディーなどの菓子類
10. 非乳製品コーヒー用クリーマー、フレーバー付きコーヒー、ケーキトッピング、ディップ、グレービー用ミックス、サラダドレッシング
前述のフードラベルの下方に原料を記載する部分がありますが、そこに hydrogenated という言葉が表示されているものにはこのトランス型脂肪が多量に含まれていることを念頭に買い物をなさると良いでしょう。
次回は脚光を浴びている地中海地方の人達の食事や「長生きのための食事10項目」などを中心にお話したいと思います。