―地中海料理が教える賢人の智恵―
最近ハワイで放映されたNHKドキュメント番組が話題をよびました。
それは千葉県に住む広告代理店に勤務するサラリーマンがガンと診断され余命一年と宣告された事から始まる実話です。
彼は思い切って会社を辞め、長い間の夢だったギリシャで残りの短い人生を過ごしたいと思ったそうです。そこで、彼は奥さんに全てを打ち明けて了解をとりつけると一緒に再び生きて還れるかどうかわからない日本を後に、青春時代からの憧れの地、ギリシャへと旅立ったのでした。
ギリシャではある片田舎の村でお百姓さんのオリーブ畑で毎日農作業のお手伝いをして働きました。これが彼には楽しくて仕方がなかったそうです。朝早くから陽が落ちるまでオリーブの実の摘み取りからオリーブ油搾りまでの重労働も少しも苦になりませんでした。
食事と言えば全粒の黒っぽいパンを自分が搾ったオリーブ油に浸しては食べるのですが、畑の豆類やトマト、ブロッコリーそしてギリシャ独特の野菜パースレイン、ウォールナットなどのサラダ。これにもたっぷりとまたまたオリーブ油がドレッシングとして使われているのでした。
こうして楽しい一年が過ぎ去った時、何と言う事でしょうか、余命あと一年と宣告されたガンがまったく消えていたのです。
1960年代の初め、ギリシャは特有の貧困、医療の立ち遅れ、喫煙人口の拡がりがあったにも拘わらず世界の最長寿国を誇っていました。
丁度、その頃国連のある機関によって世界の7ヶ国の計11グループで合計12,700人を対象にして食事習慣と死亡原因との相関関係を調べる大規模な分析調査が実施されました。それはアメリカ、フィンランド、日本、イタリア、ギリシャ、ユーゴスラビア、オランダの7ヶ国です。調査の結果は世界の最も秀れた食事習慣はギリシャと決定し、その地中海ダイエット(Mediterranean Diet)と呼ばれる秀れた素材のNO.1はオリーブ・オイルにあるということも発表されたのです。
地中海ダイエットと呼ばれる食事習慣とは決して厳格なベジタリアンではありません。しかし、肉類は殆ど食べませんし、植物系食品とでもいうべき色つき野菜と果実、穀物、木の実が中心です。魚類(特に酢漬)、ヨーグルト、チーズなどが程良く食べられると同時に毎日食事と共に赤ワインが飲まれるというものです。
因みに第2位は日本でしたが、食事と死亡原因との関係と言う観点から見て、例えば心臓病では日本4に対してギリシャ1というように圧倒的な差がありました。
ギリシャは食事中に占める脂肪摂取量は42%と非常に多いにも拘わらず、それがオリーブ・オイルという秀れた不飽和脂肪酸であることが圧倒的な生命の力なのです。
ギリシャでは伝統的にコーン油、紅花油、ひまわり油、大豆油は使われません。これらの種子油は加熱することによって、その中のリノレン酸はアラキドン酸に変わり、アラキドン酸は炎症性のプロスタグランジンやロイコトリエンというアレルギー物質に変わり、いろいろな慢性病の原因になるのですが、他方オリーブ・オイルはその成分の殆どが不飽和脂肪酸であるため加熱してもそう簡単には酸化しませんし、フリーラジカルも発生しないのです。オリーブ・オイルは善玉コレステロール(HDL)を上げ、悪玉コレステロール(LDL)を下げる働きがあり、最近の研究で明らかになったのは乳ガン、大腸ガン、直腸ガン、前立腺ガンから守る事も判明したのです。
また、ギリシャの人たちが食事習慣として飲む赤ワインやぶどうジュースにはコレステロールの酸化を防ぎ、血小板の凝固を防いで血液がドロドロにならないように働いたり、血管を拡張させる物質が含まれていて心臓病から守る力があることもわかっています。
多方面での疫学的研究が進むにつれて、地中海ダイエットと呼ばれる食文化がオリーブ、ぶどう、ブロッコリーからはじまって多くの色のついた野菜と果物などから特筆すべき「植物栄養源」(phytonutrients)を提供している事が明らかになったのです。
植物栄養源といっても沢山ありますが、これは私の製品で何年も前から訴えてきた野菜や果物やハーブから得られる栄養素を意味し、例えば硫化アリル、アントシアニン、カテキン、クロロゲン酸、フェルラ酸、フィゼチン、ゲラニオール、イソプレノイド、リモネン、ルティン、ライコピン、オレウロペインなど多くの抗酸化物質です。「スペクトラム」、「MB/PHB」に多用してきたのもこのためです。また、「MB/PHB」には特に十字架野菜(Cruciferous Vegetables)と呼ばれるブロッコリー、ケイル、カリフラワー、アスパラガスを多用しているのですが、これらの野菜群にはサルフォロフェンとかインドール3-カルビノ-ルと呼ばれる強力な抗ガン物質が含まれていることも判明しています。地中海ダイエットと呼ばれる「食文化」こそ、まさに私達が今日、採り入れなければならない賢人の知恵なのです。
去る7月、私はこのギリシャを訪れる機会がありました。
ギリシャの首都アテネのアテネ大学の正門は左右にアリストテレス、ソクラテスの巨大な彫像で作られていました。これらの賢人が地中海ダイエットの食文化を育ててきたに違いありません。そういえば旧約聖書「創世記」8章に大洪水と「ノアの箱舟」の話があります。箱舟で漂流するノアは飼っていた鳩を放ち、帰ってきた鳩がオリーブの葉をくわえていたのを見て地上では洪水が去った事を知る話です。オリーブは生命のシンボルなのです。