世界の歴史になど何の興味も持たなかった少年時代は選択科目だったことをいい事に「世界史」の授業を選択しなかった。
後年、何とバカなことをしてしまったかと悔やまれる。大学受験の時も何とか楽をして入れる大学はないものかと蛍雪時代などで調べたら、当時の東京外国語大学、中でも「イタリー語科」というところが定員にも満たない応募者数しかいないことを知り受けてみようかなあ と思ったが、何しろ昭和 29 年のこと、イタリー語なんか勉強しても仕事はないだろうと思って断念した思い出があ る。
これも、もし世界史を勉強していたらローマ帝国の興亡の歴史も少しはイタリー語で勉強できただろうし、ひょっとするとイタリー留学も実現して専門家への道を歩んでいたかも知れないと思ったりする。
ドイツ、フランスへは 20 回以上も旅した経験があるのだが不思議なことにイタリーへは昨年初めて行った。行ってみて初めて衝撃的に自分の不勉強に胸をかきむしりたい程の後悔に襲われたのであ る。
何のことはない、日本でいえば東北地方に相当するドイツや、東京に相当するフランスをみてヨーロッパに精通したと思い込んでいた。
しかし、イタリーは京都、ギリシャは奈良であ った。日本の京都、この 1,200 年の歴史を見ずに鎌倉時代はわからないし、ゴロゴロとそこら中に残存する紀元前の残存物を見ずにローマ史を学ぶのはハンバーガーやフライドポテトを食べながら医学を勉強するようなものだと思った。
マキャベリーは「キリスト教が千年も人間としての生き方を教えてきたのにどうして人間は進歩も向上もしないのか。」と言ったそうだ。これは「医学の進歩」に似ている。
丁度、平均寿命が 58 才というアメリカの医師が長生きの方法を教えているのと同じ理屈でハンバーガーを食べて薬をのんでも長生きできないのだ。
しかし、アメリカでは凄い人がいる。アメリカのタバコ訴訟で初の勝利を勝ち取った弁護士バンズハーフだ。
彼は今ファーストフード産業界全体を相手に、 35 年前にたった一人でタバコ産業を敵として闘い、そして勝利したように、今度は全米の「健康の敵」ファーストフードを相手にして訴訟を開始したのであ る。
実際アメリカでは毎年 30 万人は、肥満が原因で死亡。
医療費など肥満の社会的コストは年間 1,170 億ドル( 14 兆円)にのぼる。
成人の 61 %、子供の 13 %がデブというわけだ。しかし、問題は普通のヒトもデブも健康保険料は同じだということ。これは不公平というものだ。この肥満原因の最大のものがファーストフードなのだ、というわけだ。
そこで彼は「人を太らせる食品に税金をかける」ことによって企業の行動を変革させることを考えたのだった。
彼の教える学生の一人は完全ベジタリアン。彼は「 100 %の植物油で調理した」というマクドナルドのフライドポテトを相手に訴訟を起し、実際は牛脂も使われていたことが判明したため 1,260 万ドル(約 15 億円)の示談金が支払われたケース。
低カロリーをうたい文句にした「パイレーツ・ブーティー」というスナックも表示の 4 倍のカロリーがあることが判明し 5,000 万ドル(約 60 億円)の支払命令となったケース。
野菜のピザに牛肉が入っていたり、ダイエットアイスクリームもちっとも低カロリーではなかったり、アメリカにしてこんな状態。
日本社会では企業がウソをついても生き残れるのが大半だがこれからは高額な代価の支払いが当然の時代に入った。
さて、ローマ帝国は紀元前 146 年にギリシャを併合し、ギリシャ文明を積極的にコピーした。
昨今、ポリフェノール人気で消費急増の赤ワインもローマ人の取り入れたものだったが、最近の研究では昔の醸造方法や工程で大量に鉛が混入したらしく、どうやらローマ帝国はワインの鉛分による鉛中毒で亡び去ったのではないかといわれる。
ローマ帝国を滅ぼした原因がワインだったとすれば現代文明は何によって滅びるのか。
それはバンズハーフ弁護士のいうようにファーストフードなのかも知れない。
アメリカも日本も共にたかがハンバーガーとか、たかがコーラとなめきっているが社会や文明が静かに崩壊に向かっていることはバンズハーフ弁護士の主張と決して無縁ではないのだ。